グリーナーワールド

A Greener World

 Artwork by Koko Shinomiya

 

私たちの醸造所は、北海道ニセコ町に位置しています。活気あるリゾートエリアからは程良い距離を保ち、森や田んぼ、畑、牧場に囲まれたのどかな場所にあります

クラフトビールを作っていて、よく聞かれることは、「自分たちで麦を育ててみたら?」や「ホップを栽培して、それをクラフトビールにしたら素敵だね」という提案です。そのようなアイデアにはとても魅力を感じますが、農業経験がない私たちが、自分たちが安心して美味しく飲めるクラフトビールを作るという目標を達成するには、少々難しいと考えます。例えば、私たちが愛用している「Amarillo」「Mosaic」「Simcoe」などといった近年人気のあるホップは、品種権者がいて、私たちが自由に栽培することは不可能です。日本で栽培できるホップは、主に伝統的な品種に限られており、現代のトレンドに合わせたシトラスやトロピカルな風味を引き出すことは難しいのです。

私たちは一度に約300Lのクラフトビールを仕込んでいますが、それにはその何倍もの水が必要となります。麦芽から糖を抽出する仕込み水だけでなく、洗浄や冷却にも大量の水を使用します。また、ビールをビールたらしめる炭酸ガスは、麦芽に含まれていた糖を酵母が分解する過程で発生しますが、ビールのスタイルに合わせて最適な飲み心地を得るためには、外部から炭酸ガスを添加することが一般的です。そして、炭酸ガスはビール作りの多くの工程で、雑菌の汚染や酸素との接触を防ぐために使われます。使い終わった後は、そのまま大気に放出されます。水を大量に使用し、そして温室効果ガスを放出するこれらのプロセスは、クラフトビール作りの中で私たちが最も望ましく無いと思う部分です。

美しい自然に恵まれた場所で生活し、クラフトビールを醸造していると、常に地産地消や自然保護について考えるプレッシャーを感じます。それは時として疲れるものです。だから私たちは「ここで無理なく、できるだけ環境に負荷をかけずにクラフトビールを作ろう」という小さな目標を立てました。「グリーナー・ワールド(より緑豊かな世界)」は、世界が一夜にして緑に覆われるという大げさな夢ではなく、今日より明日へ、一日一歩で少しだけ緑が増えるように、毎日少しずつ努力し続けるという試みで、それが私たちのビジョンです。

その一環として、グリーン電力の使用を始めました。A Greener Worldの醸造プロセスは、化石燃料を一切使わずに、電力のみで運営されています。そこで、私たちは効率的に生産されたグリーン電力を購入し、それを使用することに決めました。もちろん、これだけで環境負荷が軽減されるわけではありませんが、毎日地道に続ける一環として行っています。自然保護に対するプレッシャーは時には重荷に感じますが、その解決方法を模索すること自体は喜びとなります。これからも新しいアイデアを見つけ出し、実現に向けて試行錯誤を重ねていきます。

創設者、生産責任者
大輪弘詳